密教美術への誘い

徳島文理大学 浜田 宣
<はじめに>
 仏教美術が世界の数ある芸術のなかでも殊に優れた内容を誇るものとなった一つの要因に、密教(みっきょう)美術といわれるものの展開が考えられる。密教美術とはどのようなものであろうか。
 時に、密教美術(密教)がもつ重層的で複雑な構造がネックとなり、仏教美術全体に及んでとっつきにくいものとのイメージを与えてしまう。仏教美術を鑑賞するにあたり、その形や構成がもつ意味を踏まえておくことは正しい筋道ではあるが、却ってそのことが仏教美術を近寄り難い存在として敬遠させる原因ともなる。
 しかし、敢えて本拙稿では、仏教美術を理解する糸口を見つけていただければと思い、この展覧会の内容にそって個々の密教美術の形や構造がもつ意味などの一端を紹介することにした。
目 次
一、密教と空海

二、大日如来−−宇宙を統(す)べる絶対仏

三、印相−−密教の修法と密教像の形姿

四、両界曼荼羅−−密教の華麗なる世界観の表示

五、別尊曼荼羅といわれるもの

六、曼荼羅の諸相

七、密教の修法と密教法具

八、密教工芸の諸相

おわりに

主な参考文献


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