1)壮麗なる極楽浄土世界−−浄土曼荼羅−− 曼荼羅と称される画像は本来密教独自のもので、諸尊の集会(しゅうえ)図になる図式的(幾何学的)画面であることを特徴とする。つまり、画面を長方形や正方形で区切ったり、また正方形・円形・三角形を組み合わせ、その中に仏を描くことである。この諸尊集会図という点を拡大解釈して曼荼羅と称されるものがいくつかある。その一つが阿弥陀如来をはじめとする数多くの仏が集まる極楽浄土世界の情景を鳥瞰(ちょうかん)図的に描写した浄土曼荼羅である。 平安時代半ばの政治の乱れ、また、1052(永承7)年から末法(まっぽう)の世に入るとする説が流布(るふ)したこともあって社会不安は高まり、阿弥陀如来の来迎(らいごう)救済を信じる浄土信仰が盛んとなった。諸尊それぞれに浄土があるなかで、阿弥陀如来の浄土が選択されたのは阿弥陀浄土経典の優れたところによるものであり、『無量寿経』の説く四十八の誓願や、『観無量寿経』の説く九品往生(くほんおうじょう)思想の強い影響力によるものだった。 さて、浄土曼荼羅は、それぞれの発祥・伝承に係わる寺や僧侶の名に基づいて、智光(ちこう)曼荼羅《注16》・清海(せいかい)曼荼羅《注17》・当麻(たいま)曼荼羅の三種類がある。
2)神仏習合のかたち−−垂迹曼荼羅−−
|
HOME | 曼荼羅 | 密教美術 |