おわりに

 以上、密教美術といわれるものの、ほんの一端について紹介した。ともあれ、密教美術の奥深い広がりは興味つきないものである。
 仏教美術の鑑賞の仕方は本来、鑑賞者の自由にまかせるべきである。それは、信仰の対象物である仏教美術は見るものではなく、心で触れるものであるからである。心で触れるものであるゆえに、仏教美術との出会いによる感動は、日々に新たなるものとなる。本来これでよい。
 ではあるが、仏教美術そのものがもつ客観的な芸術性の内容や仏教的意味合いなどを心得た上での鑑賞は、見方に幅をもたせ、新たな感動を生み出すことになるはずである。ありとあらゆる形のなかに、仏教思想が内包されているのであるから、仏教美術に接すること−−仏教美術の形を見ることにより仏教の真髄である慈悲に触れ、自身の心との対話がなされることになるであろう。

(はまだ あきら、徳島文理大学文学部講師)




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