中央の宝塔(ほうとう)内に釈迦・多宝(たほう)の両如来を併坐させ、周囲に八大菩薩を配した八葉蓮華と四隅に釈迦の四大弟子を置いて第一院とし、そのまわりにさらに二院をめぐらし、四摂(ししょう)・外の供養菩薩、四天王、八天などを配する。 絹本著色法華(ほっけ)曼荼羅(図5-2 西國寺蔵)はその例であるが、諸尊をすべて梵字(ぼんじ)(種字(しゅじ))で表している。
〔仁王経曼荼羅〕 仁王経(にんのうぎょう)法は、国家人民の安穏(あんのん)を目的とする。この修法の本尊として用いられる仁王経曼荼羅は、大日如来の化身(けしん)とされる不動明王を中心に四大明王や四摂・四供養菩薩、四天王、八天等を周囲に配する同心構造の方形三重形式になる。不動明王は、右手に宝剣、左に十二輻(さお)の輪宝(りんぼう)《注14》を執る。仁王経曼荼羅には息災(そくさい)法に用いられるものと増益(ぞうやく)法に用いられるものがある《注15》。前者は上位を北方とし、醍醐寺三宝院の定海(じょうかい 1074〜1149)が発案し珍海(ちんかい 1091〜1152)に描かせたもので、後者は上位を東方とし、小野曼荼羅寺の仁海(にんかい 951〜1046)が発案し如照(じょしょう)に描かせたといわれる。不動明王上方の三昧耶形(さんまやぎょう)で表された諸尊が方角を示す。 絹本著色仁王経曼荼羅(図5-3 浄土寺蔵)は、前者の形式に相当するものである。
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