古代インドにおける生活用具や武器などに祖型をもつ特異な道具である密教法具(みっきょうほうぐ)は、高度に整備された密教の修法(しゅほう)に欠くことができないものである。密教法具は、修法の際に並べられて堂内を荘厳(しょうごん)(美しく厳(おごそか)に装飾すること)し、その神秘的な形が修法を行う修行者に特殊な力を授け、修法の成就(じょうじゅ)を助ける。 さて、密教法具はその用途から次の4種類に分けられる。(1)煩悩(ぼんのう)の賊を討ち破ることを象徴する金剛杵(こんごうしょ)・輪宝(りんぼう)・羯磨(かつま)、(2)音を発するものとして、眠れる仏性(ぶっしょう)を覚醒(かくせい)させることを象徴する金剛鈴(こんごうれい)、(3)俗塵(ぞくじん)(世間のわずらわしさ)を焼却し、清浄(しょうじょう)(迷い・罪悪などのないこと)な身心をあらわさせることを象徴する護摩(ごま)壇・護摩具、(4)修法を行う場を浄めて荘厳し、降臨してきた諸尊を供養するための火舎(かしゃ)・六器(ろっき)・華瓶(けびょう)・飲食器(おんじきき)などの供養具、以上である。
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