3. 両界曼荼羅(りょうかいまんだら)

(2)胎蔵(界)曼荼羅 a.胎蔵曼荼羅の構造

 胎蔵曼荼羅は前述のように7C中頃、西南インド地方で成立したと言われる大日経(大毘廬遮那成仏神変加持経(だいびるしゃなじょうぶつじんぺんかじきょう)、善無畏(ぜんむい)訳)に説かれる曼荼羅で、詳しくは大悲胎蔵生曼荼羅(だいひたいぞうしょうまんだら)と呼ぶ。
 母親が胎児を慈しみ育てるように、仏が大悲の徳をもって私達衆生の心の中に本来具わる仏性(菩提心)を育て、あたかも蓮の種が芽をふき、華開き、実を結んでゆくように、悟りの世界へ導いてゆくようすを図絵化したものである。
 胎蔵界曼荼羅とは本来は言わず、胎蔵生曼荼羅(弘法大師は大悲胎蔵曼荼羅と呼んでいる)と呼ぶべきであるが、後世両界曼荼羅と総称する事から、金剛界に対して胎蔵界と呼ぶ事が通例化した。また、京都東寺に伝わる大師請来系の両界曼荼羅を原図(げんず)両界曼荼羅と呼ぶ。
 胎蔵界曼荼羅には、中央の大日如来を初めとして409尊の仏、菩薩、明王、天部の諸尊がグループ別に12院を構成している。
 その12院の構造についていくつかの分類法があるが、大日経の説く三句の法門である「菩提心を因とし、大悲を根とし、方便を究竟とす」によって分類すると、
 因 ──菩提心──中台八葉院
 根 ──大 悲──中台八葉院と最外院を除く全院
 究竟──方 便──外金剛部院(最外院)
 このように、大日如来の大悲の徳が同心円的に外に向かって泉が湧き出るように拡がり衆生済度をしてゆく構造が示されている。またこれは逆に、迷える衆生が大日如来の大悲の徳に導かれて、悟りの世界である中心へ向かって収束してゆく構造も示している。


胎蔵界曼荼羅

曼荼羅の構造
胎蔵界曼荼羅(全体) 浄土寺本  



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