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源氏物語をお道具に設えおもてなしをいたします。 雅に彩られた秋のひとときをごゆるりと。
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原文
いかがたばかりけむ、いとわりなくて見たてまつるほどさへ、うつつとはおぼえぬぞ、わびしきや。宮もあさましかりしをおぼし出づるだに、世とともの御もの思ひなるを、さてだにやみなむと深うおぼしたるに、いと心憂くて、いみじき御気色なるものから、なつかしうらうたげに、さりとてうちとけず、心深う恥づかしげなる御もてなしなどのなほ人に似させたまはぬを、などかなのめなることだにうちまじり給はざりけむと、つらうさへぞおぼさるる。 (新編全集一・231頁)
わらわ病みの治療のために北山を訪れた源氏は、偶然そこで藤壷に生き写しの紫の上を発見します。これが絵などでも有名な垣間見場面です。その紫の上は、実は理想 の女性と慕う藤壷の姪であり、以後「紫のゆかりの物語」として展開します。しかし物語では、かわいらしい紫の上登場の裏で、藤壷との密通という重大な事件がひそかに行われていたのです。「いかがたばかりけむ」とだけあって、密通に至る過程は省略されています。もちろん王命婦が手引きしているのですが、それを宿命ととらえているのでしょうか。ここで注意すべきは、藤壷の心内に「あさましかりし」とあることです。「し」は過去をあらわす助動詞ですから、これ以前に既に二人は逢瀬を持っていたことになります。つまりこれが初めての逢瀬ではなかったのです。しかも今回の逢瀬により、藤壷は懐妊してしまいます。二人の苦悩はいよいよ増大し、桐壷帝や生まれてくる皇子(後の冷泉帝)まで巻き込んで、源氏物語の暗く大きなテーマがいよいよ展開していくことになるのです。
若紫の席 濃茶・・・表千家流(法輪会)
お茶席は、方丈の間にて。
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あらすじ
源氏十八歳
源氏十八歳の春、わらわ病み(俗に言うおこり)にかかった源氏は、霊験あらたかな北山に住む聖を訪ねて加持を受けた。夕暮れ時惟光を供にそぞろ歩き、北山の僧都の僧房のあたりへ行く。小柴垣の外から覗き見ると、大儀そうに読経している尼君のそばへ、十歳ばかりの美しい少女が走り寄って「伏籠に入れていた雀の子を犬君が逃がしてしまったの・・・・。」と眼を赤く泣きはらしている。その顔が藤壺の宮にそっくりなのに驚く。
―源氏が生涯を共にする最愛の妻、若きの日の紫の上との出会いである。少女は、似ているのも道理、藤壺の宮の兄兵部喞の宮と北山の僧都の妹尼の娘との間に生れた姫宮であった。源氏は自分の手に引き取って養育したいと尼君に懇願したが、年端もゆかぬ故と良い返事がなかった。夏のはじめ藤壺の宮が里下りした時、源氏は宮の侍女の王命婦を責めて宮と一夜の逢瀬を待つ。やがて藤壺に懐妊の兆が現れ、帝は喜び藤壺は罪の意識におののく。
九月姫君の祖母の尼君は世を去り、姫君は父兵部喞の宮邸に引き取られると聞き、源氏は急ぎ姫を自邸に連れ出して教養することにする。
監修 写真家 村上宏治
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