不滅の鍵盤によるリサイタル
Fortepiano Yamamoto Collection

 自動ピアノという言葉は、機械的で無味乾燥な人間不在の音楽を連想させるが、リ プデューシングピアノは、偉大なピアニストの記録した演奏を再現する精緻な機能を 備えたピアノである。曲に対する演奏者の解釈や表現法、陰影と色調、そして熱情と 香気までもありありと蘇らせる。この精緻な装置は非常に高価で、大邸宅が約1,0 00ドルした時代に1台4,000ドルから数万ドルしたと言われている。

 その装置は高価格にふさわしい最高級グランドピアノに組み込まれ、至高のグラン ド型リプロデューシングピアノを生む結果となった。リプロデューシングピアノは、 1904年ドイツのM.ウェルテ社によって作られたが、1914年にはもうひとつ巨 大なピアノ会社であるアメリカンピアノ社がアンピコという装置を登場させた。天才 技師チャールズ.F.スタッダードが開発したものだが、これも特許はウェルテ社から 購入したものだった。その高価な装置はチカリング、クナービ、メイソン アンドハ ムリンなどに組み込まれた。

 特にメイソン アンドハムリンは名器中の名器であった。名演奏を再現できるの は、クラシック音楽の分野だけでなく、リプロディーシングロールには、ポピュラー 音楽も数多く収められており、こうしたロールが市販されていた。約35年間におけ るポピュラー音楽の変遷を洗練された演奏により鑑賞できる。

 ピアノ音楽の黄金時代と呼ばれる20世紀初期の偉大なピアニスト パデレフスキ ー、ラフマニノフ、ルビンシュタイン、ゴドフスキーなどの歴史的名演が再現され、 それもオーディオ装置のように単に音のみを再現するのではなく実際の楽器を通じて 生きた演奏を聴けるというまことに驚異的な装置である。しかし、これらの装置が製 作されたのは1920年末頃までと短命であった。

(やまもとのぶお フォルテピアノ修復家)